ここ数年、SNSではツヤツヤでサラサラのロングヘアが揺れる美髪動画が多く見られ、美髪ブームとともに「髪質改善」という言葉も定着してきました。
その中で、髪をより美しく見せる技術として縮毛矯正を選ぶ人が増えています。
縮毛矯正は今やただ癖を伸ばすだけでなく、髪の悩みを解消して日々の扱いやすさを高め、髪をより美しく保つためのメンテナンスとしても広く浸透しています。
しかし、縮毛矯正の後にヘアカラーの色が抜けてしまい、がっかりした経験はありませんか?
実は縮毛矯正とヘアカラーの相性には、髪の科学的なメカニズムが深く関わっています。
この記事では、縮毛矯正でカラーが落ちる本当の原因を解説し、色持ちを良くするための具体的な対策をご紹介します。
施術の最適な順番やタイミング、日々のヘアケア方法まで、美容のプロ視点で徹底ガイド。
正しい知識とケアで、美しいストレートヘアとお気に入りのヘアカラーを両立させましょう。
縮毛矯正でカラーが落ちる3つの原因
原因①:アルカリ剤による色素の流出
縮毛矯正の薬剤には強いアルカリ性の成分が含まれており、髪のキューティクル(髪の表面を覆う保護層)を開く働きをします。
通常、健康な髪は弱酸性(pH4.5〜5.5)に保たれていますが、縮毛矯正の薬剤はpH9〜11という強いアルカリ性です。
キューティクルが開くと、ヘアカラーの色素も外に流れ出やすくなります。
特にカラーをしてから時間が経っていない場合は、まだ色素が髪内部に完全に定着していないため、より色落ちしやすくなるのです。
原因②:高温アイロンによる熱ダメージ
縮毛矯正では、一剤による薬剤処理の後に180度の高温のストレートアイロンを使用します。
この熱処理工程は、縮毛矯正の仕上がりや持ちを左右する非常に大切な工程であると同時に、ヘアカラーの色にも影響を与えます。
髪のタンパク質が高温で変性を起こすと、その過程でヘアカラーの色素分子も破壊されてしまうのです。
また、高温は髪に含まれるメラニン色素にも影響を及ぼし、髪が明るくなったり、赤みや黄みが強く出る原因になります。
原因③:薬剤の還元作用による脱色効果
縮毛矯正の薬剤に含まれる還元剤(チオグリコール酸やシステインなど)は、髪の内部にあるジスルフィド結合を切断する働きがあります。
還元剤はヘアカラーの色素やメラニン色素にも作用してしまうため、ある程度の脱色作用は避けられません。
特に暗めのヘアカラーや、染めたばかりのカラーは、この還元作用の影響を受けやすく、施術後に「思ったより明るくなった」という結果になりがちです。
縮毛矯正とカラーの最適な順番とタイミング
【推奨】先に縮毛矯正→後からカラーの順番
【メリット】 先に縮毛矯正を行う理由は、カラーの色持ちが格段に良くなるからです。
先に縮毛矯正をかけることで、髪の形状を整えてから色を入れるため、理想通りの発色になります。
髪へのダメージも2回に分散されるため、1日で全てを行うよりも負担が軽減されます。
【デメリット】 縮毛矯正直後の髪は薬剤の影響で染まりにくい場合があるため、最低でも1週間は期間を空ける必要があります。
また、美容院に2回通う必要があるため、時間とコストがかかります。
【最適な期間】 縮毛矯正からカラーまでの期間は、最低でも1週間から10日、理想は2週間以上空けましょう。
髪のダメージレベルによっては、3〜4週間空けることも検討してください。
先にカラー→後から縮毛矯正の場合
【メリット】後から縮毛矯正をする場合は、急なイベントや忙しくスケジュールの調整が難しい方など、縮毛矯正よりもカラーの優先度が高い場合に有効な順番です。
また、縮毛矯正を定期的にかけている方で、根本と毛先など部分によってダメージレベルに大きく差がある方の場合も、先にカラーをした方が縮毛矯正をよりダメージ少なく施術することが可能になる場合があります。
【デメリット】この順番の最大のデメリットは、縮毛矯正によってカラーが大幅に色落ちしてしまうことです。
場合によっては2〜3トーン明るくなることもあり、せっかく染めたカラーが台無しになる可能性があります。
【最適な期間】 もしこの順番で施術する場合は、カラーから縮毛矯正まで最低でも2週間、できれば1ヶ月空けるのが理想的です。
同日施術は可能?
技術的には可能ですが、髪へのダメージとカラーの色落ちリスクが非常に高いため推奨されません。
同日施術が可能なのは、髪が健康でダメージが少なく、ブリーチ経験がない場合に限られます。
総合的に見ると、「先に縮毛矯正→後からカラー」の順番が、色持ち、仕上がり、満足度の全てにおいて最も優れています。
少し時間はかかりますが、美しい髪を長く保つためには、この順番を選ぶことをおすすめします。
縮毛矯正後の色落ちを防ぐ5つの対策
対策①:施術直後のシャンプーを控える
縮毛矯正やカラーの施術直後の髪は、薬剤の化学反応がまだ完全に終わっておらず、髪内部で定着の過程が続いています。
特にカラーの色素は、染めた直後に濡らしたりシャンプーをしてしまうと、せっかく入れた色素が流れ出て、色持ちが大幅に悪くなります。
汗をかいたり雨に濡れたりした場合も、できるだけ髪を濡らさないように注意が必要です。
対策②:カラー専用シャンプー・トリートメントを使う
一般的なシャンプーは洗浄力が強く、髪の汚れと一緒にカラーの色素も洗い流してしまいます。
カラー専用シャンプーは、優しい洗浄成分を使用し、色素を守りながら汚れだけを落とす設計になっています。
おすすめの成分は、ヘマチン(カラーの定着を助ける)、ケラチン(髪の補修)、PPT(髪内部を補強)です。
また、カラーシャンプー(ムラサキ、シルバー、ピンクなど)を週に2〜3回使うことで、色味を補正できます。
縮毛矯正やカラーの施術直後の1週間は、いつもより念入りにトリートメントを行いましょう。
薬剤を使用した施術により髪の内部が不安定になっていますので、トリートメントでの保湿、栄養補給が欠かせません。
櫛やブラシでとかす時も、できるだけ摩擦を避け丁寧に扱うことで、一時的に弱くなった髪を余計なダメージから守ることができます。
対策③:ぬるま湯(38度以下)で洗う
シャンプーの際のお湯の温度も、色落ちに大きく影響します。熱いお湯で髪を洗うと、キューティクルが開いてしまい、色素が流れ出やすくなります。
髪を洗う際の最適な温度は36〜38度です。「ちょっとぬるいかな」と感じるくらいが適温です。
特にカラー直後はお湯の温度を下げることで、急激な色落ちを防げます。
対策④:紫外線から髪を守る
紫外線はカラーの色落ちを加速させる大きな要因です。UV-AとUV-Bが髪内部の色素を破壊し、カラーが褪色するだけでなく、髪が赤っぽくなったり黄ばんだりします。
髪専用のUVカットスプレー(SPF30以上、PA++以上)を使用し、2〜3時間おきに付け直しましょう。
帽子や日傘での物理的保護も効果的です。紫外線は年中降り注いでいるため、季節を問わず対策が必要です。
対策⑤:高温でのヘアアイロン・コテの使用を控える
縮毛矯正後の髪に追加の熱ダメージは極力避けましょう。
使用する場合は、温度を120〜140度に設定し、必ずヒートプロテクトスプレーを使用してください。
使用頻度は週に2〜3回程度にとどめ、縮毛矯正直後の1〜2週間は特に使用を避けましょう。
縮毛矯正前にできる色落ち予防策
縮毛矯正やカラーの施術において、最も重要なのが美容師さんとのカウンセリングです。以下の情報を必ず伝えましょう。
- 最後にカラーをした時期と種類
- ブリーチ履歴の有無
- セルフカラーの有無
- 過去の縮毛矯正やパーマの履歴
- 髪の悩み(パサつき、切れ毛など)
正直に伝えることが、美しい仕上がりへの第一歩です。
縮毛矯正と同時にトリートメントで髪の体力をつける
縮毛矯正をかけるときは、一緒にトリートメントメニューも受けることをおすすめします。
美容師さんが髪の状態を把握して適切な成分を補充し、髪を内部から強化しながら行えるので、施術によるダメージを最小限に抑えられます。
施術前後の2〜3週間は週に1〜2回の集中トリートメントを使用し、洗い流さないトリートメントを使用するなどのホームケアを徹底しましょう。
それでも縮毛矯正で色落ちした時の対処法
カラーシャンプーで補色
自宅で手軽にできる色補正方法として、カラーシャンプーの活用があります。
- ムラサキ:黄ばみを抑える(ハイトーン向け)
- シルバー:アッシュ系の色味をキープ
- ピンク:血色感のある色味を維持
- ブラウン:ブラウン系カラーの色持ち向上
週に2〜3回、通常のシャンプーと置き換えて使いましょう。
髪の回復期間を設けて、トリートメント中心のケアに切り替え
色落ちが激しかった場合、次の縮毛矯正やカラーまで最低でも1ヶ月は髪の回復期間を設けましょう。
トリートメントによるケアに専念し、アイロンやコテの使用も低温を守り、これ以上髪のダメージが進行しないように守りのケアを徹底しましょう。
洗い流さないトリートメントも毎日欠かさず使用して髪を保護しましょう。
オイルタイプとミルクタイプを組み合わせるのも効果的です。
美容師と長期的なヘアプランを相談
信頼できる美容師さんを見つけて、長期的なヘアプランを相談しましょう。
年間のカラースケジュール、縮毛矯正のタイミング、トリートメントの頻度などを計画的に決めることで、髪へのダメージを最小限に抑えながら、理想のヘアスタイルを維持できます。
縮毛矯正の色落ちに関するよくある質問(FAQ)
Q1: 縮毛矯正とカラーは同じ日にできますか?
技術的には可能ですが、髪へのダメージとカラーの色落ちリスクが高いため、基本的には推奨しません。同日施術が可能なのは、髪が健康でダメージが少なく、ブリーチ経験がない場合に限られます。理想は別日に分けて、髪への負担を分散させることです。
Q2: 縮毛矯正後、どのくらい期間を空けてカラーすべき?
最低でも1週間、理想は2週間以上空けることをおすすめします。髪の状態別では、健康な髪は1〜2週間、やや傷んだ髪は2〜3週間、ハイダメージ毛は3〜4週間が目安です。美容師さんに髪の状態を診断してもらい、最適なタイミングを決めましょう。
Q3: セルフカラーと美容院カラー、どちらが色落ちしにくい?
美容院でのカラーの方が圧倒的に色落ちしにくいです。プロ用薬剤の品質、髪質に合わせた調合、均一な塗布技術、前処理・後処理の徹底、縮毛矯正との相性考慮など、多くの点で優れています。特に縮毛矯正をしている髪には、美容院でのカラーを強くおすすめします。
まとめ
縮毛矯正でカラーが落ちる主な原因は、アルカリ剤、高温の熱、還元剤の作用によるものです。
色落ちを防ぐには、先に縮毛矯正、後からカラーの順番で、最低1〜2週間空けることが最も効果的です。
施術後は、直後のシャンプーを避ける、カラー専用シャンプーを使用する、ぬるま湯で洗う、紫外線対策をする、ヘアアイロンの使用を控えるという5つの対策を徹底しましょう。
また、美容師さんに髪の履歴を正確に伝え、低ダメージの薬剤を選び、事前トリートメントで髪を補強することも重要です。
もし色落ちしてしまった場合も、カラーシャンプーなどでリカバリーできます。美しいストレートヘアとヘアカラーを両立させるために、計画的な施術とこまめなケアを心がけましょう。
縮毛矯正とカラーの施術計画でお悩みの方は、髪質診断ができる信頼できる美容院でぜひ相談してみてください。
適切なアドバイスと丁寧なケアで、理想の髪を長く楽しむことができます。
